【県内美術館・記念館めぐり】 行ってみんね、来てみんね~(55)

戦争のもうひとつの真実を伝える

岡まさはる記念長崎平和資料館

園田尚弘

 NPO法人岡まさはる記念長崎平和資料館は1995年に開設された。開設の目的は大日本帝国によるアジア侵略戦争、とくに朝鮮の植民地化、中国侵略によるアジアの人々の犠牲。苦難の歴史的事実を展示し、いまなお解決していない日本政府による戦後補償の促進をうながすことである。
 展示は朝鮮侵略、中国侵略の歴史、日本軍慰安婦、南京大虐殺、731部隊、戦争に抵抗した人々といったコーナーを設け、写真、説明、関係資料などを展示している。
 これらの展示の赤い糸になっているのは、朝鮮人被爆者の問題である。このことはこの資料館の開館、維持に貢献した2人の人の生き方と仕事をたどれば、おのずから見えてくる。
 このような資料館を作ろうと発案したのは岡正治(1928-1994)さんであった。岡さんはルーテル教会の牧師で、長崎市議でもあった。日本帝国主義下での植民地として、苦しみをなめ、戦時には日本国内で不足する「労働力」として強制的に移入され、強制労働をさせられ、長崎で原爆地獄の中に叩きこまれた朝鮮人被爆者の存在は岡さんの頭から離れたことのないテーマであった。高實康稔(1939-2017)さんらと協力して、数年間の聞き取りや宿舎、飯場跡などの調査の結果、長崎の原爆死者数の10%以上、約1万人は朝鮮人であると公表した。このような事実を展示する資料館を発案した岡さんが急死した後、高實さんが仲間とともにその遺志を受け継ぎ、実現し、発展させてきたのが当資料館である。
 詳しくは、岡まさはる記念長崎平和資料館HP(https://www.okakinen.jp/)をご覧ください。