【医科研究会報告】

 今さら聞けないシリーズ「リハビリテーション」

後期高齢者のリハビリテーション、廃用症候群の診かたのポイント

講師は松坂誠應先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻教授)

 

 20院所より33人参加して(1)リハビリテーションとは、(2)後期高齢者の特徴と生活機能、(3)廃用症候群発見の契機、(4)廃用症候群の予防と対策について講演が行われた。
 (1)リハビリテーションとは、生活機能の再建とノーマライゼーション(普通の生活が出来る)の実現をいう。生活機能とは身体の機能・構造、活動ADL、社会参加からなり、疾病、環境因子の変化、個人因子の変調により後期高齢者では容易に悪化しやすい。
 (2)後期高齢者の臨床的特徴は多くの疾病を有し、急性増悪しやすく、予備能力が少なく、廃用症候群をきたしやすい。更に抑うつ的心理状態で、環境の影響を受けやすく、閉じこもりより低活動となり寝たきりになりやすい。
 (3)廃用症候群発見の契機は、転倒、閉じこもり、筋力低下・拘縮、嚥下障害である。転倒は、生活に支障を来す前触れである。過去1年間に転倒したことがある、青信号の間に横断歩道を渡れない、連続1q(15分)歩けない、この1年間に入院した、脳卒中の既往があると転倒が怖くなり外出を控える。閉じこもりは、疾病増悪、体力低下、転倒、配偶者の死、介護者の体力低下、物理環境の悪化で起こりうる。筋力低下・拘縮は、寝返り・起き上がりができない、椅子からの立ち上がりが不安定、トイレ動作が難しい、移動に時間がかかることで発見する。嚥下障害で、食事に時間がかかり、食事量の減少と体重減少、会話が不明瞭、むせ・咳が多くなり、発熱があると肺炎合併に注意する。
 (4)廃用症候群の予防と対策のうち効果のある転倒予防対策は、服薬の減量、生活環境の整備、股関節と膝関節周囲の筋力強化+バランス訓練、歩行訓練+補装具指導である。誤嚥性肺炎の予防と対策には、抗菌剤を使わずに口腔内清掃、口腔ケア、脱水の改善と栄養指導、摂食時の座位保持が有効である。食事介助は、必ず健側から与え、リクライニング位は一般的に誤嚥しにくい体位で、頸部を屈曲位にするがよい。

(山下紀夫記)